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第二十話 さようなら、クワッチ 後編

はなちゃんは、思わずこころの中で叫びました。「さようならクワッチ。大事にしてもらってね!」

夏の暑さが残る中で二学期がはじまりました。

学校の教室で見る地球儀で見るとアメリカと言う国は、日本と比べるととてつもなく大きい国だと感じました。

"ボストン"

これがはなちゃんたち家族が引っ越す街の名前です。

週末には引越の準備がはじまりました。
パパは、その合間をぬってクワッチ達の部屋にこもるようになりました。
どことなく寂しそうです。

「パパ、最近元気ないね。」

おにいちゃんがおやつを食べながら言いました。

「クワッチ達とお別れしなければいけないから...」

ママがそっと言いました。

「えっ!!」

二人は顔を見合わせました。

「クワッチも一緒じゃないの!?」

はなちゃんは、思わず聞き返してしまいました。

遠い国アメリカにはクワッチ達を連れていけないのだそうです。
アメリカ大陸にはクワッチ達の仲間はほとんどいないそうです。

また、パパのように飼育している人もいない為、幼虫の餌となるキノコのビンを買うこともできないそうです。

「パパ、クワッチとお別れしなければいけないの?」

はなちゃんは、クワ部屋から戻ってきたパパに心配そうに聞きました。

「残念だけどサヨナラしないといけないんだよ。」

パパは、寂しそうに答えました。

結局、"オオクワ工場"の幼虫たちの大半はパパのクワ友のやまさんとなべさんに引き取ってもらいました。

最後まで大切にしていたはじめて我が家に来たオオクワッチもパパの会社の友達の子供に譲ることにしました。

シアトル行きを前にした最後の日曜日にパパの友達が小学生の男の子をつれて引き取りに来ました。
ちょうどはなちゃんと同じ年ぐらいでしょうか。

「おじさん、ほんとうにこのクワガタもらっていいの!?」

はなちゃんは、思わずこころの中で叫びました。

「さようならクワッチ。大事にしてもらってね!」

そして、がらんとしたクワガタ部屋に金属の棚だけが残りました。
パパは、その日は夜遅くまで一生懸命クワ部屋を掃除をしていました。
一人で黙々と床を拭いていました。

そして、いよいよ成田空港からボストンに旅立つ日がやってきました。

【完】

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