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第十八話 みんなの夢

「でも、今の夢は、クワッチのコンテストで優勝することかな?」今度は、マジメな顔でパパが答えました。

お盆を過ぎるとすごしやすい雨の日が多くなりました。
はなちゃんは、夏休みの宿題の"将来の夢"について絵を描くことになりました。

「ママ、子供の頃の夢はなんだった?」

はなちゃんは、キッチンでスコーンの生地を並べながら尋ねました。

「そうね。小さい時はお花やさんになりたかったな。はなちゃんと同じ年のころは、ケーキやさんだったかしら...」

ママはそういうと天板に並んだスコーンをオーブンに入れました。

「ふ~ん」

ママはいつも週末にお菓子を作ってくれます。 はなちゃんは、ママのつくるお菓子が大好きです。

やがてスコーンの焼ける甘い匂いが漂って来ました。
ゴボゴボとコーヒーメーカーの音がしてきてコーヒーの香ばしい匂いが立ち込めて来ました。

「パパ、おにいちゃん、おやつですよ!スコーンが焼けたわよ」

ママが叫びました。

おにいちゃんは、テレビゲームをセーブしてすっとんで来ました。
おにいちゃんはママのスコーンが大好きなのです。
焼きたてのサクサクのスコーンにたっぷりのクリームとブルーベリーのジャムをつけていただきます!

「おにいちゃんの将来の夢はなあに?」

はなちゃんは聞きました。

「もちろん、サッカー選手になることさ!プロになって外国にいくんだ!!」

「へぇ~すごーい!」

はなちゃんはジュースを片手にスコーンを頬張りながら叫びました。

「おっ、おいしそうなスコーンだね!」

パパは洗面所から手を洗って出てくるなり言いました。

「パパは、小さい時の夢は何だった?」

はなちゃんは急かすように聞きました。

「そうだな。プロ野球選手になることだったかな?もちろん、昆虫博士にもなりたかったよ!」

「やっぱり!」

みんなで声をそろえて笑いました。

「でも、今の夢は、クワッチのコンテストで優勝することかな?」

今度は、マジメな顔でパパが答えました。
楽しいおやつの時間が終わり、はなちゃんは、子供部屋にこもって出てこなくなりました。

やがて、パパがクワガタ部屋での"仕事"を終えて戻って来ると子供部屋の机で、はなちゃんが居眠りをしていました。
机の上には画用紙にお花やさんのおんなの子の絵が描かれていました。

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