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第四話 こんにちは赤ちゃん

「ガリガリ」という音はどうやらこの木をかじる音だったようです。木の中からは、小さな赤ちゃんがたくさん出てきました。

お盆をすぎると雨の日が多くなりました。

はなちゃんは、毎日クワッチの水そうをおにいちゃんとのぞきます。
かならずおとこの子とおんなの子は、餌を乗せている木のえさ皿の下で二人そろって寝ています。

「この子たちホントに仲良しだね。」

おにいちゃんがいいました。

「けっこんしてハネムーンなんだって」

とはなちゃんが答えます。

その日の夜遅く、パパが寝室にあわててやって来ました。

「おにいちゃん、はな、クワッチがけっこんしているぞ」

急いで、かいちゅうでんとうをもって暗やみの玄関に行きました。
おにいちゃんとそっと水そうをのぞいてみるとおとこの子とおんなの子がえさ皿の上で違う方向を向いています。

「パパ、けっこんしてないよ。」

はなちゃんはけっこんはキスをすることだと思っていました。

「クワッチたちはオシリでけっこんするんだよ」

パパが答えます。

たしかに頭はちがう方向を向いていますがおしりがくっついています。
かいちゅうでんとうの光にびっくりしたのでしょうか?あわてふためいています。
でもおしりがつながっているので思うように逃げられません。

やがてオシリのキスもはなれるとふたりはまたえさ皿のうらにもぐって行ってしまいました。

「じゃましちゃったかな」

パパがつぶやきました。

あれから何日たったでしょうか。

クワッチたちの水そうから、

「ガリガリ、ガリガリ」

と何かをかじる音がするようになりました。

パパは、大きい水そうと太めの木を二本買って来て

「さて、クワッチにママになってもらおう」

といいました。

しめらせた二本の木を寝かせて茶色いおがくずでうめていきます。 その中にそっとクワッチのおんなの子を入れました。

「パパ、おとこの子はいれないの?」

「はなちゃん、これからおんなの子はサンランするんだよ」

「サ・ン・ラ・ン?」

「赤ちゃんを産むんだよ」

それからしばらくのあいだすいそうから「ガリガリ」という音がつづきました。

パパは、クワガタのお店から白いビンをたくさん買って来ました。
キノコでできたビンだそうでこの中に産まれて来る赤ちゃんを入れるのだそうです。

夜になると庭の虫たちがチロチロとえんそう会をはじめました。

すっかり秋らしくなった九月の終わりの週末のことです。
パパがすいそうのうらを見上げて叫びました。

「幼虫だ」

「エ、赤ちゃんが産まれたの」

どうやら、クワッチたちの子供たちがかえったようです。

パパは、大きなコンテナを用意してすいそうをそっとひっくり返しました。

「うわーここにもいるよ」

おにいちゃんは、ひっくり返った木を指さして言いました。
茶色いおがくずの中から10匹もの幼虫が出てきました。
とっても小さな幼虫ですがよく見ると小さな足を動かしています。
オレンジ色の頭がこっちを見ています。

「ちっちゃくてかわいいね!」

お父さんは、白いキノコのビンのフタをあけていきます。
おにいちゃんはドライバーで穴をひとつひとつ空けていきます。
はなちゃんは、穴に幼虫を入れていく係です。

「なんだかこのキノコのビン、おいしそうだね」

おにいちゃんがいいました。
確かにおにいちゃんが大好きなレアチーズケーキのようです。
スプーンで開けた小さな穴に一匹づつ入れて行きます。

赤ちゃんたちはゆっくりともぐって行きます。

今度は、パパがドライバーで木をわりはじめました。
まあるい木は、デコボコになっていました。
「ガリガリ」という音はどうやらこの木をかじる音だったようです。
木の中からは、小さな赤ちゃんがたくさん出てきました。

はなちゃんは、おにいちゃんときょうりょくして一匹、一匹キノコのビンに入れて行きました。
けっきょく、全部で38匹もの赤ちゃんが出てきました。

「みんなに名前をつけてあげないと....」

「でも、こんなにたくさんじゃ覚えられないよね(笑)」

みんなで顔を見合わせて笑いました。

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