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第十一話 クワッチどこにいったの? 前編

小さなプリンカップはフタはそのままですがみごとに穴が開けられいました。

春から夏の陽射しに近づいてきました。

おにいちゃんは来週からプールが始まるようです。
クワガタ部屋のクワッチたちの活動も活発化してきました。

そんな初夏のある日の事です。

「大変だ~ママ」

パパがクワ部屋からすっ飛んで来ました。

「どうしたの?また新しいかぶちゃんでもかえったの」

ママは、いつもの調子で落ち着いて言いました。

「かぶちゃんじゃないよ。クワッチだよ!クワッチが逃げちゃたんだよ!」

「えっ?逃げた!?」

ママが洗いものの手を休めてあわてて言いました。

「逃げたって、あなたまさか家の中じゃないでしょうね!?」

「家の中だよ。どこかにいるはずだよ」

「...........」

「パパ、どの子が逃げちゃたの」

はなちゃんは、折り紙の手を休めて聞きました。

「この春羽化したおとこの子とおんなの子だよ!」

「二匹も逃げちゃたの?」

おにいちゃんもゲームの手を休めて言いました。

「二匹ともプリンカップに入れていたんだよ。セロテープでフタを止めていたんだけど...」

早速、みんなで一階に行って"現場検証"です。

今年羽化したクワッチたちは一匹一匹別々に大小のプリンカップにいれて大きなダンボールに保管されていました。
大きなプリンカップはフタがこじ開けられていましたが、小さなプリンカップはフタはそのままですがみごとに穴が開けられいました。

「あらまぁ上手に逃げたわね」

ママは感心して言いました。

「ダンボールにも穴が開いてるよ」

確かにダンボールの下の角にも小さな穴が開けられています。

「おんなの子は、下の穴から脱走したようですね。でも、この穴からはおとこの子は脱出できませんね。」

パパはすっかり探偵気分です。

「とするとおとこの子は上から」

おにいちゃんも眼鏡に手をあてながら続きます。

「飛んで逃げたの?」

はなちゃんも続きます。
クワガタ部屋は普段は閉めていますが、夜間は開いてる場合もあります。

「二人で駆け落ちしちゃったのかしら」

ママがぽつりと言いました。

「か・け・お・ち?」

はなちゃんにはいみがわかりません。

「仲良しのふたりで自由を求めて逃げることだよ」

パパがそれとなく言いました。

早速、みんなで捜索開始です。クワッチたちは暗くて狭いところを好むそうです。
すいそうやダンボールの陰を捜します。
クワガタ部屋を一通り捜しましたが、結局見つかりませんでした。

それからというもの、はなちゃんは夜が怖くてたまりません。

「トイレに行くときに出て来ない?」

とか、

「おふとんの中に潜って来ない?」

とか心配でたまりません。

おにいちゃんとパパは、

「ワナを仕掛けよう」

とゼリーをえさにワナを作ろうと相談していましたが、ゴキブリがでるとママに反対されて諦めました。

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