第十五話 オオムラサキの里 前編

待ちに待った夏休みがやって来ました。
今年の家族旅行は、パパが学生時代から通っている八ヶ岳のペンションです。
はなちゃんは、初めて買ってもらったラケットでみんなとテニスをするのを大変楽しみにしていました。

出発の日は、朝早くから荷物を車に詰め込んで朝ごはんも食べずに出発しました。
あっという間にだんごうざかというサービスエリアに到着し、みんなで朝食を食べることにしました。
レストランの中で、パパは地図を見ながら突然みんなに聞きました。

「オオムラサキってしってる?」

「???」

「エドムラサキなら知ってるよ?!」

おにいちゃんがふざけながら言いました。
はなちゃんは、どちらも意味が判りません。

「日本の国ちょうに指定されているきれいなちょうちょのことだよ」

パパが答えました。

「実は、クワッチたちが住んでいる林に生息しているらしい。八ヶ岳行く途中の山梨県には、韮崎や日野春などクワッチ達の故郷がたくさんあるんだよ。」

「オオクワガタが採れるの?」

おにいちゃんは身をのりだして来ました。

「そうかんたんにとれないさ。でもオオムラサキには会えるかもね。何十匹も放し飼いにしている博物館もあるようだし。」

はなちゃんは、きれいなちょうちょが飛び交う姿を想像するだけでワクワクしてきました。
いつもならサービスエリアの売店の探検をするところですが、早くオオムラサキに会いたくなってパパを急かして出発することにしました。

「オオムラサキの林に向かって出発進行!」

はなちゃんは、おにいちゃんと声を合わせて前を指さしました。
高速道路は、朝早く出たこともあり、相変わらずスイスイ進んでいます。
パパは、鼻歌を歌いながら運転しています。

「パパ、調子に乗ってお巡りさんに捕まらないようにね!」

ママが、心配そうに言いました。
やがて“韮崎”というインターチェンジの標識が見えてきました。

(つづく)