第七話 うめぼし

今年もあとわずかというクリスマスの前の土曜日のことです。

車でお仕事に出かけていたパパが、キノコのビンを買って帰って来ました。

大きなキノコのビンのダンボールを運ぶパパに向かって、はなちゃんがたずねました。

「パパ、また赤ちゃんが産まれるの?」

「クワッチの赤ちゃんのミルクをとりかえるんだよ」

とパパが答えます。

赤ちゃんをみんなでキノコのビンに入れてからちょうど三ヶ月たっていました。

どのビンも真っ白だったビンがはんぶんぐらい茶色くなっています。

パパは大きなスプーンでビンをほじくり始めました。

しばらくすると、”ボコ”っと大きな穴が開きました。

そこには、白い大きなクワッチの赤ちゃんがいました。

くらやみにいきなり大きな窓が空いたようで、クワッチの赤ちゃんはそこからこちらを見つめています。

はなちゃんは、その時、思わずつぶやきました。

「うめぼし...」

赤ちゃんは、白いからだをしていますが頭の部分は赤ちゃいろをしていました。
まんなかにうすくせんがあり、ちょうど小梅のつけものように見えたのです。

パパは、スプーンでそっととりだすと、台所でつかっていた古いはかりにのせました。

メモリは20グラムをさしていました。クワッチの赤ちゃんは背中をまるめて丸くなっています。

「ずいぶん、大きくなったね!」

おにいちゃんがびっくりしたような声で言いました。

「でも、まだ赤ちゃんだよ!?」

はなちゃんは、答えました。

パパは、つぎからつぎへとクワッチの赤ちゃんをほりだしました。

おにいちゃんとはなちゃんは、新しいビンに赤ちゃんがもぐりやすいようにまんなかに穴をほっていきます。

よくみるとクワッチの赤ちゃんにも二つのしゅるいがあることがわかりました。大きな幼虫と小さな幼虫です。

パパが言うには大きいほうがおとこの子で小さいほうはおんなの子だそうです。

けっきょく全部で30ものクワッチの赤ちゃんを新しいキノコのビンに入れ替えました。

なかなか、うまくもぐれない赤ちゃんもいます。

「パパ、手伝ってあげなくていいの?」

はなちゃんは、心配そうに言いました。

「大丈夫。ゆっくりもぐっていくからね」

パパの言葉を聞いて、はなちゃんは少し安心しました。

晩ごはんを食べ終わる頃には赤ちゃんはみんな新しいキノコのビンにもぐってしまいました。

(つづく)